Published on

Tallinn-Helsinki 2019

旅行です。


Log

以下はその時書いた日記.

Tallinn Helsinki 1

Date: June 13, 2019 23:58:32 GMT+3 Weather: 16°C Dangerously Windy and Foggy Location: Sadama 9, Tallinn, Harju, Estonia

雨が降ったり止んだりしているけど、想像していたよりは暖かかった。 ホテルまではトラムで行った。トラム最高!トラムのある国に生まれたかった。 そういえば今住んでるところにもあるっちゃある。世田谷線だって広義のトラムなのでは。解決。

旧市街の外縁部は意外と寂れているように見えたが、たぶんそれは時間帯のせいだろう。もう 20 時ぐらいになっていたので。 スーパーに行って買い物をした。乳製品は本当に安く感じる。 プライベートブランドとはいえ、ブリーチーズ 125g で 1.5 ユーロぐらいだった。十分おいしかったけど、せっかくだしもっといいやつを買っておけばよかった。 あと、380g のベリー・全粒粉味のヨーグルトとベリーを食べた。

部屋は気楽。あれ、旅は……。

Tallinn Helsinki 2

Date: June 14, 2019 17:01:53 GMT+3 Weather: 13°C Dangerously Windy and Foggy Location: Sadama 9, Tallinn, Harju, Estonia

今日は早起き。なんか明け方も明るかったので目覚めは良かった。 夢の中で、忠義深い侍に対して「SEKIRO みたいですね!」って話しかけていた。

朝食はホテルのビュッフェ。ライ麦パンにチーズとピクルスとサラミを乗せただけのものを作ったけど、こういうので全然美味しく感じてしまう。

とりあえずホテルを出て、旧市街を散策した。 旧市街はそれはもう旧市街という感じで、場所は違えど見慣れたものなのだし衝撃は受けない。 が、この国で一番の観光地だろうけど、それほど騒がしくなくていい雰囲気だった。 細部の様式はかわいかった。猫を見かけることはないが、なんか猫モチーフの看板が多いような。

教会の尖塔に登れるらしいが、入場可能になる 10 時まで少し時間があったので、歩いて回った。 尖塔に登るには 1 人 3 ユーロのチケットが必要だった。

安全には注意して(自己責任で)みたいな注意書きがあったが、そんなどうせすごくないんでしょ、と思っていた。 だけど実際は、これまでで一番ハードな部類の階段だった。 まず、石造りの螺旋階段は狭く、ずっと保管されているものだからか石も滑りやすいため、手摺がわりのロープを使わないと本当にあぶない。 この時期だからか、まだ暑くはないのが幸い。

高さは 30m 以上あるんだろうか。途中休憩場所みたいなものやスタッフ用の扉やそこに延びる LAN ケーブルもあった。 尖塔に出ると、たしかにいい眺めだった。開放感がある。狭い足場ではあるが。 帰りはまだ楽だった。足の負担は大きいはずだけど、どれぐらいの道のりかわかっているというのは安心感がある。

そのあとは “Nurri Kassikohvik” という猫カフェに行った。 広いし、猫も自由気ままに過ごしているし、人々もまったりと過ごしている、最高の場所だった。 思うに、国外の猫カフェはちゃんと食事ができるしカフェとしても充実しているような気がする。法的なものの違いなんだろうか。 こういう場所、日本にもあるとよさそう。 うちの猫に似ている猫がいておもしろかったのと、メニューに「水曜日のネコ(”Suijobi no neko”と翻字)」があった。

また旧市街に戻ってきた。トラムは最高だ。何度でも書くべきことだ。なぜ最高なのかはここでは語りつくせない。 旧市街をぶらぶらして、展望台的な広場でまったりとしていた。結構高い崖みたいなところに座って、街の様子を描いている女性がいて、その様子が街の雰囲気とあっていた。そういう人生を送りたかった。

そういえば、(多分有名なはずの)旧市街の広場に、水色の風船が群生していて何事かと思って眺めていた。 しばらくの間は、風船は誰にも傷つけられずに残っている様子だった。 少し高台に上って写真を撮っていると、急に破裂音が鳴り始めた。ちょっと緊張したけど、風船だった。 よく見ると、一部の人たちが風船を割り始めていた。 10 分もすると、広場にあった風船は割られるか空に放たれるかして全滅していた。 一体何だったんだ。Twitter で検索してもほとんど記録がなくてわからなかったけど、唯一数年前の記事が出てきて、独立戦争の戦没者数分だけ用意された風船が、という感じだったようだ。 割っていいのか、それ。

夜には屋内市場を一巡してから、その近くにある倉庫街を改装したクリエイティブ地区(誰がそんな雑な呼称をしたのか)へ行ってみた。 日は暮れてはいないが、よく冷える。

晩御飯は近くのバーガースタンドで食べた。 ハンバーガーは美味しかったけど、フライドポテトにはパクチーが入っていた。 ロシア語がいろいろなところから聞こえてくる。どれぐらいの人が話せるんだろうか。

そんな帰り、先ほど通った市場ももう閉店時間らしいが、妻も僕もトイレに行きたかった。 警備員のおばあさんにまだ入れるかどうか聞くときに、発声システムの調子が悪くて、ついつい “We’re in emergency situation” みたいな大げさなことを言ってしまった。 快く通してくれたので事なきを得たが、面白い感じになってしまった。

Tallinn Helsinki 3

Date: June 15, 2019 22:35:46 GMT+3 Weather: 18°C Clear Location: Siltasaarenkatu 14, Helsinki, Uusimaa, Finland

Helsinki への飛行機が思いの外早い時間だったので、早起きして街を散策した。 朝早いと観光客が全然いない。今日は少しだけ晴れ間がのぞいていた。3 日目にしてやっといい感じ。

朝食を食べてから空港に向かった。 Tallinn 空港は小さいけど中はかなりおしゃれで機能的、ゆっくり過ごせる感じで良かった。寝てしまった。 そういえば Tallinn Helsinki 間って飛行機を飛ばす意味があるのかと思ってたので地図を見たら、85km ぐらいの距離らしい。フェリーで 3 時間ぐらい、高速船で 1 時間半。やっぱり微妙だ。 今回のフライトは ATR72 というプロペラ機(ターボファンエンジン?だっけ)のもの。機内はうるさかった。 こういうのはもっとギリギリに行ってもいいのかもなぁ。

Helsinki に着いた。妻の荷物が届かなくて、カウンターに聞きに行ったら無事に届いた。こうして時間は過ぎていく。 ホテルは Hakaniemi 地区にあった。便利。 さすがに Helsinki では観光客をよく見かける。自分もそうだし。 それでも人が肉塊になってしまうような混雑っぷりではないので、これぐらいが大都市の恩恵と個人の自由のバランスのちょうどいいところなんだと思う。

全然何も関係ない気付きとしては、大笑いするときに手を叩く随伴行動をする人は、どうも日本でしか見かけないということ。 謎。どこからやってきたジェスチャーなんだろうか。 テレビのガヤを自分自身で再現しているんだろうか。

さて、2 度目の Helsinki。やっぱり世界最高の都市だと思う。 去年できたらしい中央図書館 Central library Oodi に行った。

人間のための建築の最新形という感じだった。よい。 遊ぶのも学ぶのも自由という感じで、こうした投資を最近でもできるというのはすごい。しかもちゃんと人々が利用している。 ただ図書館の例によって、科学技術コーナーの本はえらく古くて無意味なものばかりだった。そういうのは大学図書館に行けってことかな。

本当にこうした公共投資の充実っぷりはすごい(何度でも)。 高福祉高負担スキームがどの程度うまくいくのかは、結局市場への過度な干渉と制御がうまくいくのかどうかってっ感じ(知らんけど)なんだろう。 GDPR みたいな動きや EU 議会の形骸化みたいな話が出てきて、そういう社会的民主主義的なものへの疑いや、寛容さへの風当たりは(実際の議論は洗練されていないにもかかわらず)批判として機能してしまっているのはつらかった。人間の理性を信じたかったので。ヒースの著書を読んだときに思ったこととも関連して、はたしてこの理想的なように見える状況がうまく持続できそうなのかは気になってしまう。 一方でどうせ日本はおっさん的ななにかによって破滅するのは避けられないと思っているので、こういう感じの国が成功するのを心から願っている。 ついでに市民権と国籍をくれ。頼む。

あと、ここでは電動キックスクーターをよく見かける。スウェーデン発の Voi、ベルリン発のTier、あと頻度は低めだけど他のサービスもある様子だった。

図書館近くを散策した。池と緑。池の桟橋でコスプレ姿の男たちがいて、そのなかのセーラー服姿の人が臑毛を剃っていた。なぜ?

大聖堂近くの Cafe Engel で早めの晩御飯とカフェを楽しんだ。量的にも金額的にも、僕にはカフェがちょうどいいって感じ。ミートボールはこれまでで一番美味しかった。本当に和食より好きだ。悪気はない。

そのあとは夕陽(日没は 11PM ごろなので見れはしないが)に沈む街を見に港に行った。 やっぱりこの時期はみんな出かけている。西日が強烈なのだが、まだ 8 時すぎだった。 地元のビールを飲んでまったりとしていた。 老若男女、好き勝手に過ごしている。よい。

最後にスーパーに行って、買い物をした。 チーズの種類の豊富さは本当に最高だ。安いし。もっとも、ここで和食の食材を買うんかというと、まぁ無理でしょうねって感じだから、そういうものなんだろうね。 酔っ払いながらも Voi があったら乗ってみようかな、と散策しながら探していたけど、残念ながら見つからなかった。 その間にも Voi や Tier に乗った人たちとすれ違った。ちょっと悔しい。うまく乗りこなしている人(2 人乗りも!規約的には禁止らしいが)もいれば、まだ慣れていない人もいて、本当にここ最近の変化なんだなと思ってわくわくした。 この規模の都市でそういうものが広まるってのはいいな。

ほんと、いいところだ。ただ単に辛い面を見ていないだけなのだろうが。

Tallinn Helsinki 4

Date: June 16, 2019 22:37:23 GMT+3 Weather: 19°C Dangerously Windy Location: Siltasaarenkatu 14–16, Helsinki, Uusimaa, Finland

朝食は相変わらずうまい。ライ麦パンと各種のチーズ、そしてピクルスがあればそれでいい。ライ麦パンはもっと日本でも食べられるようになるといいのに。そういえば、なんとなくだけど、日本ではベーシックな食料品、たとえば食パンの類などは、自分が子供の頃からそんなに変わっていない気がする。 たぶん、こちらの人々にとってのライ麦パンも、ほとんど変わっていのは想像できるけど、言いたいのはそういうことじゃなくて、新しい種類の食べ物が導入されるケースが少ないんじゃないかということ。特に国外で食べられているものについては。なんとなく、日本に入ってくる過程でローカライズという名の劣化版になったり、6P チーズや食パンのように微妙な典型例ができあがって、市場のほとんどのものがそれに忠実なものになってしまう、というか。 といいつつ、今までの経験上、こちらでのアジア食材のパターンがまさにそういうものだと思うので、意味のない話かもしれない。成り立ちを理解していたり、日常的にそれを食す文化にあるわけじゃないものについては、特に料理人でも何でもない人々が対象のものはそういうふうになってしまうんだろうか。

もっとも、今日のハイライトである建築や住居、新しい社会的なサービスへの受容性みたいなところは、違うと信じたいという気持ちはある。

朝食後は改装中の Hakaniemi マーケットがわり(?)に横の広場でやっていた日曜のフリーマーケットに立ち寄った。 意外とハンドメイドのものが多かった。ムーミンのポーチをお土産として買った。そこのおばあさんと話しているときに、その人はスウェーデン語が母語だと言っていて、スウェーデン系フィンランド人だと理解していたのにもかかわらず、なぜか対話システムが壊れて、”So you’re from Sweden! Nice.” みたいなことを言ってしまったのちに、すぐ訂正するって失敗をやってしまった。申し訳ない。優しくてよかった。

Aalto 邸の説明ツアーは、けっこう楽しみだった。 その地区はかなり静かで、まわりの建物も高級そうな集合住宅ばかりだった。ガラス張りのテラスが多いのは Stockholm と同じだった。 案内開始までの時間があったので、近くの図書館前のベンチで写真を取り込んだり、前日の日記を書いたりしていた。iPad Pro は今回持ってきてよかった。大活躍です。

Aalto 邸のガイドは、保全財団の学芸員の人がやっているようだった。今回は英語で。 30 分間ずっと説明をしっぱなしでも聞き取りやすいテンポだった。英語を選択するのは英語母語話者以外も多いだろうから、配慮しているのかもしれない。ありがたい。 Aalto 邸は自分にとっては理想的な人間用住居だった。Bauhaus と同様に、実用的であり、謙虚だけど進歩的な感じが好き。このあたりは、適当に一緒くたにされることが多いモダニズム的なものとは全然違う。 こうしたものが保全され、多くの人々に受容されているというのは、文明だな。

そのあとは、写真美術館に行った。あの地区はなんかいい感じで好きだったので。みなとみらいから観光地感を抜いたような感じ。Hamburg っぽいというほうが適当かも。港であり、かつての倉庫がリノベーションされているところだし。 昨日書いたように、Helsinki では最近電動キックスクーターシェアリングのサービスが始まっているみたいで、街中でよく見かけたので気になっていた。会社で吉本くんが言っていたようなものであり、たしかに楽しそうだったので。 早速 Voi のアプリを入れた。Tier も試したかったけど、SMS 認証が要るからやめた(データプランの e-SIM なので)。1

基本的に乗り捨て OK、時間制課金、回収はボランティアでポイントやクレジットのインセンティブ付きという感じ。 たとえば Voi だと、回収ボランティアは "Hunter" と呼ばれていて、特典があるらしい。 停車可能エリアも決められているので、やたらと遠出はできない仕組み。 でもまぁたまに Map 上には、はぐれ Voi がいて、だいたいバッテリー残量が厳しい感じだった。 たまたま近くにあったので、写真美術館まで乗っていくことにした。 運動神経がないからどうなるかと思ったけど、一発で乗れた。楽しい! 速度は 20kph で制限がかかるけど、加速は速いしトルクがある。ただ、ホイールが小さいのでどうしても石畳のところは振動がひどい。 でも、(大容量バッテリーとインホイールモーターの発明以外仕組みは大したことないのにもかかわらず)新しい乗り物って感じはするし、何よりアプリを含めた一連の体験が良かった。 このタイプのサービスなら、シェアリングエコノミーもいいなって気がした。 ただ、これは人間+自転車勢の権利が強くて、歩道・自転車レーンが整備されている国・地域だからこそという感じなので、そこらへんの環境が劣悪なところでは全然流行らなさそう。そもそも日本だと公道走行できるものがほとんどないらしいし(一応吉本くんの情報ではカスタマイズをすればイケるらしいが、それは一般的に大丈夫ということではいので、道のりは遠い)。

フィンランド写真美術館は、Fotografiska と比べるとだいぶ小規模なんだけど、これはこれで尖った展示が多くてよい。その地に関係するテーマや、その地に関係する写真家の展示が多くて、遠くから来た甲斐があるって感じ。とはいえ、東京の写美でもそんな方向性になったらいいかといえば、自分は私写真的なジャンルは好みじゃないから、微妙かも。

小腹が空いたので倉庫街を改修したクリエイティブセンター内のカフェに寄った。ケーキはいつ食べても最高です。 帰りも Voi に乗った。課金が捗る。 妻も普通に乗れていた。でも、怖いからそんなに乗りたいわけじゃないらしい。

日が長いと、結局人はその分朝早くから夜遅くまで行動できるらしい。旅行自体の高揚感もあるのかも。 といっても自分たちはそんなにアクティブではないので、ホテル近くのカフェバーで食事をした。 ここのハンバーガーは、これまで人生の中で食べたもののうち、最高の味だった。料理としてのハンバーガー。妻が食べていたピザもおいしかった。夕陽の中、カモメに襲われないかびくびくしながらではあっても、楽しかった。ビールもよかった。豊かさ。 そういえば、Tallinn で最後に食べたハンバーガースタンドのフライドポテトには、パクチーが乗っていた。ここで妻が食べたピザにも。どこにもそんな p から始まるような単語はなかったよな、と不思議がっていたが、そういえばパクチーは Coriander の葉だった。別にアジアン料理ブームではなかった。

寒くなってきたし、帰ることにした。出口で迷っていたらウエイターさんが、”Scandic?” と聞いてきて、そうですと答えると、地下の出口からショートカットを開通させてくれた。カードキーで。ゲームみたい。 お礼を言ってホテルに上ってみると、なんか内装が違う。外に出てみると、おなじ系列でもこちらは “Scandic Passi” というホテルで、宿泊中の “Scandic Hakaniemi” と隣接するブロックにあるものだった。そんなことってある? とりあえず外から出て、さっき食事をとっていたテラスの横をそそくさと小走りで、ウエイターさんに見られないようにホテルに帰った。1Pint 飲んだのだけど、元気だった。

と思いきや、ホテルに着いた途端、吐き気がして胸焼けもひどかった。そして眠かったので、シャワーを翌朝に後回しにして寝てしまった。弱い。水分は摂ったほうがいい。

Tallinn Helsinki 5

Date: June 17, 2019 23:48:46 GMT+3 Weather: 16°C Clear Location: Siltasaarenkatu 14, Helsinki, Uusimaa, Finland

今日は別行動することにした。妻は marimekko のアウトレットへ、僕は適当に電動スクーターで回ることに。 ちょうどホテルの近くに Tier があったから、それに乗って行った。

行き先は特に決めていないが、せっかく一人行動なので、まずはヘルシンキ大学に向かうことにした。 これはいつもの「失われた時間の補填」みたいな行動なので、特に意味はないのだが。 それはともかく、朝は涼しくて最高だ。

Google Maps で示されたポイントに行ってみても、ゲートのようなものは見当たらなかった。 人々の流れを見ながら構内に入ってみた。 かなり歴史のある建物もある一方で、北欧モダン建築(雑)な感じの棟も見えた。近づいてみると、社会科学系の学部の棟だった。 自転車で通う人が多い様子だった。いいな。

もし売店があればグッズでも買うかと思っていたけど、この地区にはそうした建物は見当たらなかった。全然ちゃんと探していなかったので、あるんだろうけど。もしかしたら、3 年前に来たときに外から見ていた中央駅近くの図書館あたりにあるのかもしれない。 そして、自分がここに通うとしたらお世話になるであろう CS 学部は、そもそも Helsinki 市内にはなさそうだった。電車で 20 分ぐらいの距離にある様子だった。電動スクーターではそこまで行くのは大変そうだった。

とりあえず海沿いを回ってみた。以前来たときに行ったことがないところと、行ったことがあるところを混ぜながら回った。

それにしても、自転車道がかなり整備されている。一国の首都なんだから、当然といえば当然なんだけど、その首都である東京で、日々自転車や車に脅かされながら(大げさ)暮らしている身としては、これだけ「歩行者+自転車」vs.「自動車」の構図がうまく分けられている都市というのは羨ましく思う。 身もふたもない話だがインフラが整っているのが大部分なんだろう。でも、ミクロな観測として、ここでは自転車やキックスケーター利用者のヘルメット着用率がぱっと見 50%ぐらいで、手旗信号を使う人もそれなりにいるぐらい、きちんとしている印象があった。 また、横断歩道や信号のあるところでは当然としても、それ以外の場所でも歩行者優先の運用がかなり高いレベルでされていた。道路を渡ろうとすると、ほぼ確実に車は停止してくれる。 そもそも中心部は自動車の制限速度が 10kph ~ 30kph と遅く、状況はかなり良い。 とはいえ、それでも「じこはおきるよ」ということになったが。

海沿いの地区は地価が高そうだった。真新しい一方でかつての港・倉庫街に溶け込むような赤煉瓦で装飾されたサンルーム付きのコンドミニアム群。あーこれは世界上位ランカーの住むとこですね〜と思った。 一方でそこは閉鎖的なゲーテッドコミュニティではなく、沿岸部には歩行者・自転車用の道が続いていた。ベンチも、ゴミ箱も、ちゃんとある。

Helsinki 初日の晩にビールを飲んだ港に出てきた。近くで休んでいると、ツアー客っぽい人が桟橋からゲロっていた。船酔いなら仕方ないよね。でも、ここは風が強いし、手すりから海面までだいぶ高さがあるせいか、なんか飛沫がこっちにも飛んできているような気がした。勘弁してくれ。すぐにトラムの駅に向けて立ち去った。

前にちょっと散歩した西の湖沿いの地区に向かった。Cafe Regatta があるところらへん。お金使いたくないしそもそもお腹が空いていないので、安いカフェを利用した。自転車に乗っている人がよく使うところのようだ。簡単なケーキを食べ、コーヒーを飲んだ。普通においしかった。基準が甘々。 この地区は本当にまったりとしている。いくら人口 50 万とはいえ、静寂そのものでよかった。 都市で暮らす利便性と、こういう何もしない暮らしを両立できる境界は、規模の軸ではどのあたりになるんだろうか。

未踏地帯といえば、市の中心部から北側にある Olympic Stadium らへんを思い浮かべたので行ってみた。 途中、(僕の記憶では)歩行者・自転車用信号が青にも関わらず、2 台連なりのデカいトラックが、一方は左折、一方は直進してきて、後者が横断中の自分に向かってきた。 経路から逃れないと、と思ってスクーターを止めたときにちょっと転んで膝を擦りむいた。最悪。 ドライバーは気づいていないようだった。もしくは、そこに悪意を見出すなら、どうでもいい感じだった。 人は海外でちょっとしたトラブルに遭った瞬間、保険のことを真っ先に心配するんだなと思った。 まぁ、無事でよかった。

そろそろ時間もあれかなと思ったので、Hakaniemi に戻るコースを行った。 公園で休憩しながらリンゴをかじった。このリンゴ、確かに皮ごと食べられる。品種が違うのか。 ホテルの朝食コーナーにあったから気軽に持ってきていたが、あとでスーパーで見たときには 2.5EUR ぐらいのタグがついていた。意外と高い。

妻と合流した。後半は買い物デーだった。 Marimekko アウトレットの方は、日本人ツアー客が大勢いて、レジは 30 分以上待つぐらいの悲惨な状況だったらしい。行かなくてよかった。

Stockmann の近くで、弦楽器で MUSE の”Resistance”を演奏している人たちがいた。そうか、明日の晩にライブがあるんだもんな、と実感。今回はほとんどいいことばかりなだけに、日程のミスだけが目立ってしまう。

一通り回ってから、ホテル近くの公園で、スーパーで買った簡単な食事やビールを楽しむつもりだったが、カモメに襲われそうだったので、途中からホテルの部屋に戻って食べた。

Tallin Helsinki 6

Date: June 18, 2019 6:50:57 GMT+3 Weather: 17°C Mostly Sunny Location: Kissakahvila Helkatti, Helsinki, Uusimaa, Finland

帰国日。昨日も結局夜更かししたせいか、あまり眠れなかった。 Hakaniemi マーケット改装中の一時的な建物に寄ってみた。

前に食べたスープ屋さんがこちらに移ってきていたり、お土産物屋も営業していた。 何も買わなかったけど。 途中コルク材で作られたハンドメイドのバッグや靴を売っているお店の人と話した。 日本語を大学で勉強しているといっていた。 今までずっと気になっていたこのあたりの人たちがどこに住んでどこに通うのかという質問を、なぜかこのタイミングで聞いてしまった。 フィンランドの人にとってもこのあたりの家賃は高いらしい。 ワンルームで 700EUR ぐらいが最低ラインということだった。 勝手な想像だけど、ここでの最低ラインは都内の激安ワンルームより全然人権がありそうな気がしてならない。それでも、いろいろな税負担などを考えると、やっぱり高いよな、という感想。 カルマポイントを貯めないとな。

猫カフェは改装していたためか、1 度目はその前を素通りしてしまった。 時間的にはここが最後の目的地。 改装後はかなり暗くて落ち着いた雰囲気になっていた。猫はこの方が過ごしやすそうかも。 妻が 2 度目に来たときにはすでにこういう内装に変わっていたらしい。

テーブルに案内されて目に入ったのはすでに横になっているタキシード柄の猫。 やっぱり居心地がいいんだろう。 店員さんに聞くと、猫たちは開店当初から入れ替わっていないみたい。 “Permanent residence for the 9 cats” なのは変わらない様子でよかった。 レモネード、チョコレートケーキ、コーヒーを頼んだ。 チョコレートケーキは前よりアップグレードされていた気がする。おいしかった。

なんか、今のところ日本以外の猫カフェは、本当に文字通りカフェであり、飲食がちゃんとできるところばかりだったなと思った。 食品の衛生関係の法律はこちらの方が厳しそうな気もするけど、どういう部分の違いでこうなっているのか気になるな。

空港では団体ツアー客の作る長い列にちょっと疲れを感じてしまった。 免税手続きは自動化マシーンで行った。 妻いわく何らかのブログでは使わない方がいいって紹介されていたらしいけど、指示通りに操作すれば問題なく手続きはできた。 カッコいい UI ではあったけど、うまくいっているのかどうかわからない反応をすることが多いものだったので、苦手な人は途中で諦めてしまいそうなものではあった。

出国審査場で列の渋滞が起きていた。 どうもツアー客が何とかって様子で、添乗員さんが色々と大変そうな感じになっていた。 人間は画面の指示に従わない傾向があるらしい。 あの仕事は自分には向いていなさそうだ。

日本に帰ってきた。普段車に乗らないので、首都高の眺めは面白い。とはいえ、この混沌とした感じは旅行者として楽しむぐらいにしたいと思った。

首都高や東京の景観といえば、五十嵐『美しい都市・醜い都市―現代景観論』って本を思い出した。自分には全然合わなかったし、個人のエッセイ的なもの以上のものではないと思った本。 合わないな、と思ったのは、著名な建築評論家に期待する機能が、あまり果たされていない内容だったという点。 美醜の基準や歴史的な背景、国際比較、実現のための合議プロセス、日本の場合はどのような様式が標準として定義できるか、みたいな体系的な議論を読みたかった。 もしくは逆に、独善的なビジョンを提示するような内容でもよかった。

あまりこの分野の作法はわからないんだけど、個別の事例や建築プロジェクトに議論が終始している気がした。 ある国や地域の街並みとして捉えられるものは、そうした特徴的なポイント間にある区画も含まれるだろうし。 こういう本でよく晒し上げられている無個性な国道沿いの風景というやつが、すぐに思い浮かぶ。 また、街並みや都市についての議論は単一の建築物についての議論以上に、それらを取り巻く経済などの状況に影響されるわけだろう。 そういうシステムについてよりも、どちらかといえば文化評論のような体裁で議論が進む本が多くて疲れた。 よく取り上げられる日本橋・首都高の事例のように、景観論者の間で嫌われているこのカオスな景観が、サブカル的に好感を持たれているという事実以上のことを言えないというのは、大丈夫なのか。 都市景観の今の姿にかなり自発的に関与することができたはずの人たちが、結果出来上がった者への理論付けをできていないように見えるのは、結構つらくないか。 大多数の、雑に設計されたが誰も問題に気づくこともなく朽ちていく区画は、いつ議論されるんだろう。 多くの人にとっては街は所与のものだろうし、都市の設計と変化への思慮や責任をみんなに求めるのは難しいだろう。 それは、そういう専門家の人たちの裁量に委ねられると思うんだけど。

一方で何らかの様式で意匠を統一するというのは、意匠だけで済む問題ではないだろうし、そうした建設・建築行為を統制できることを無批判に良しとするある種の景観論があるとすれば、それは批判にさらされるだろうな、とは思う。 美しい街をつくろう運動みたいなやつは、確かにこの点で弱すぎる気がする。 その点は同意という感じ。

でもまぁ自分の場合、あまりに場当たり的で設計の意図が存在しないように見えたり、経済活動などによって必然的に発達してしまったというわけではなく、雑な運営の結果できたように見えるゾーンが嫌なのかもしれない。 その意味で、今住んでいるところや京都の人口過密っぷりはあまり気にならないし、実家のある地域やしばらく前に住んでいたさいたま市の一部の地域は、設計は良くないと思っている。 ......これ、住む場所自体にアイデンティティを依拠させない人間だから好き勝手言えるんだろうな、と思う。

家にスーツケースを置いてから出社するつもりだったけど、さすがに疲れたのでリモート勤務にした。

Footnotes

  1. SMS を受信するだけならデータローミングは要らない。また、e-SIM なので、IIJmio の SIM の設定でフィンランドの通信事業者(Elisa、DNA など)を選択すれば、+81- の番号でそのまま受信できるということは、この時はまだ気づいていなかった。それは翌日。